イギリスのEU離脱(ブレグジット)は日本株に影響しますか?
日本時間の2020年2月1日午前8時に、イギリスがEUを離脱します。直接的な日本株への影響はありますか?
イギリスのEU離脱は、「関税」、「為替」、「金融」の三つに関係します。日本株も、貿易が活発な企業の業績や株価に、影響が出ると考えられます。 順番に見ていきましょう。
関税
EU圏内では、「関税」が撤廃されています。EUから脱退すると、イギリスはヨーロッパ諸国への輸出に関税がかかるようになります 。例えば、ある日本企業がイギリス国内に工場を構え、周辺国から部品を仕入れて製品を作り、ヨーロッパに輸出しているとします。そうすると、部品の輸入に関税がかかり、製品を輸出する際にも関税がかかることになります。
つまり、イギリスからEU内に輸出した製品は高額となり、消費者から敬遠される可能性が高まります。モノが売れなくなり、イギリス内の企業は売上が落ちるのです。部品点数が多い、自動車業界は打撃を受けるでしょう。
「本田技研工業(7267)」(以下、ホンダ)は、イギリスにある工場からの撤退を表明しました。ブレグジット※との直接的な関係はないと説明していますが、先の見通せない状況が撤退を促したことは間違いなさそうです。結果的に、イギリスの工場閉鎖を決めたことは、ホンダ株の値上がりに繋がりました。
※ブレグジットとは、「Britain(ブリテン=イギリス)」と「Exit(エグジット=退出)」を合わせた言葉で、イギリスのEU離脱を表す言葉です。
このとき、野村證券は投資判断を引き上げました。中立を意味する“ニュートラル”から、積極的な買いを推奨する“バイ”にしたのです。さらに、目標株価を3,400円から3,850円に引き上げています。
自動車企業でイギリスに工場を持つのは、「トヨタ自動車(7203)」、「日産自動車(7201)」です。日産もホンダと同じように引き上げを決めています。その他製造業を中心に、イギリスに拠点を持つ日本企業がブレグジットの混乱に巻き込まれた場合、株価が下がる可能性はあると考えられます。
為替
もう一つの要素が「為替」です。ブレグジットが本格化すると、上記でお伝えした関税の影響を避けるため、多くの企業が拠点を引き上げようとします。経済が混乱し、ポンドは下がると考えられます。ユーロも巻き込まれて、売り圧力にさらされるでしょう。そうなると、相対的な円高となります。
円高は、日本の“輸出企業“に大きく影響します。自動車、電機などの銘柄は下がる可能性があるので、注意が必要です。また、円高は日経平均全体を押し下げます。「ソフトバンクグループ(9984)」や「ファーストリテイリング(9983)」のような大型株は、連れ安になることもあります。
金融機関
三つ目は、イギリスで認可を取った「金融機関」です。EUを脱退すると、ヨーロッパにサービスを提供できなくなります。「三井住友フィナンシャルグループ(8316)」はイギリスで金融業の免許を得ています。ブレグジットにより、別のEU加盟国で新たに免許を取得する必要があるのです。そうした手続きや、現地法人の立ち上げに遅れが生じれば、株価は下がるでしょう。
★ブレグジットは、「関税」、「為替」、「金融」に影響します。特に注目したいのは為替です。円高は日経平均全体に下落圧力をかけます。ブレグジットの混乱が続くようなら、このあたりを意識しておくとよいでしょう。
★実際にイギリスがEUから離脱した場合、2020年末までは「移行期間」となります。移行期間は、EUから離脱した際に起きる変化を緩和するためのもので、この期間中はほぼこれまでと同じように経済活動ができます。この期間中に、イギリスがEUや日本などと貿易協定を結べるかで、EU離脱の影響の大きさが変わります。上手く協定が結べなかった場合、移行期間終了後に関税などの悪影響が大きくなるので、注意が必要です。
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投資歴18年目の株初心者アドバイザーです。2005年からの投資成績は+2億円を突破しました!2009年に発売した著書『はじめての株1年生 新・儲かるしくみ損する理由がわかる本』は、累計59,000部のロングセラー。その他、数多くの金融系メディアにも寄稿しています。