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イギリスの投資ファンドが東芝のTOBを検討!株価はどうなる?

ゆうと担当:ゆうと

最終更新日:2023年11月30日

2021年4月7日未明、イギリスの投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズなどが東芝(6502)に対してTOB(株式公開買い付け)をおこなう予定であると日経新聞が報道※1しました。買収総額は2兆円を超える見通しです。今回のTOBでは、CVCキャピタル・パートナーズなどがすべての株主から株式の取得を目指すため、TOBが成立すれば、東芝は上場廃止になります。

※1 参考:東芝に買収提案、英投資ファンドなど 2兆円超で非公開化

今回のTOBの目的は?

今回のTOBの目的は、筆頭株主のアクティビストファンド「エフィッシモキャピタルマネージメント※2」(以下、エフィッシモと省略)と経営陣が対立しており、それに対抗するためです。東芝の車谷社長は前職でCVCキャピタル・パートナーズ日本法人の会長を歴任しており、友好的なファンドと手を組んで株式を非公開化することで、対立するエフィッシモを排除する狙いがあります。

※2 エフィッシモキャピタルマネージメントは、「投資先企業の経営陣に対して、積極的に働きかけて、企業価値の向上を目指す投資家(アクティビスト)」です。

東芝がTOBされるまでの経緯
日付 内容
2017年3月23日 エフィッシモが東芝の株式を8.14%取得
2017年12月5日 アメリカの原発子会社の減損損失により債務超過に陥り、その補填として約6,000億円の第三者割当増資を実施。エフィッシモも増資を引き受けて、11.31%まで保有比率が上昇。
2020年5月25日 エフィッシモは東芝の株式を買い増して15.36%まで保有比率が上昇。保有目的をこれまでの純投資から経営陣への助言や重要提案行為をおこなうことに変更
2020年7月31日 株主総会でエフィッシモが、自分たちの推薦する取締役選任の株主提案をおこなうも否決。一方で、東芝の車谷社長の賛成比率も約57%と薄氷の可決となった。
2020年12月18日 前回の株主総会で会社側からの圧力により、一部の株主が議決権の行使を断念していたり、一部の議決権行使が集計されていないなどの不正があったとして、エフィッシモが臨時株主総会の招集を請求
2021年3月18日 臨時株主総会で、エフィッシモによる前回の株主総会が公正に運営されていたかを調査する、調査者の選任の株主提案が可決
2021年4月7日 イギリスの投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズなどが東芝に対してTOB(株式公開買い付け)をおこなう予定であると報じられる。

エフィッシモは、東芝が原発子会社の問題で上場廃止の危機に立たされたときも増資を引き受けており、保有目的も純投資と静かな立場を取っていました。しかし、2020年にエフィッシモが保有目的を経営陣への助言や重要提案行為をおこなうことに変更してからは一転、両者の関係は悪化します。

エフィッシモはコングロマリット・ディスカウント※3が生じている点を問題視しているものの、東芝が2019年におこなった上場子会社3社の完全子会社化※4はコングロマリット・ディスカウントの解消とは相反する施策であり、経営陣のパフォーマンスを評価できないとしています。

※3 コングロマリット・ディスカウントとは、「多くの事業を営む企業の価値が、各事業ごとの価値の合計よりも低い状態」のことです。コングロマリット・ディスカウントを解消するためには、各事業を切り離すスピンオフなどの方法があります。
※4 2019年に東芝がおこなった、「東芝プラントシステム」、「ニューフレアテクノロジー」、「西芝電機」の完全子会社化のことです。

そのため2020年の株主総会では、自分たち機関投資家の視点を共有できる取締役を推薦して株主提案をおこないました。エフィッシモの株主提案の賛成比率は3~4割ほどに留まり否決されたものの、会社側の車谷社長の賛成比率も約57%と薄氷での可決となりました。

さらに2020年12月、エフィッシモは前回の株主総会で会社側の圧力や不正により一部の株主が議決権行使を断念したり、議決権の集計が正しくおこなわれていなかったりしたと断罪しました。そして2021年3月の臨時株主総会で、前回の株主総会が公正に運営されていたかを調査する調査者の選任の株主提案が可決されました。

そのようななか、CVCキャピタル・パートナーズなどが東芝に対してTOB(株式公開買い付け)をおこなう予定であると報じられました。CVCキャピタル・パートナーズの日本法人がは車谷社長の前職であるため、友好的な買収者と言えます。そのため今回のTOBの目的は、対立するエフィッシモを締め出して、自由な経営判断ができるようにすることであると言えます。

今後の株価への影響は?

今回のTOBでは、すべての株主から株式を取得する予定です。まだ正式なTOBは発表されていませんが、日経新聞の報道によると、CVCキャピタル・パートナーズは買収額の目安として3割程度のプレミアムを提示したとされています。2021年4月6日終値の東芝の株価は3,830円であるため、仮に30%のプレミアムであればTOB価格は4,979円になる計算になります。

寄り付き前の気配値では、制限値幅上限(ストップ高水準)の4,530円まで株価が上昇しています(2021年4月7日10時現在)。

東芝(6502)の板情報>

東芝(6502)の板情報

(出典:SBI証券

正式にTOB価格が発表されれば、すべての株主から株式を取得する予定であるため、TOB価格まで株価が上がると考えられます。

イギリスの投資ファンドによる買収を拒否する方向へ(2021年4月16日追記)

共同通信は、東芝がCVCキャピタル・パートナーズによる買収に対して、大手銀行に上場維持すると伝え取締役議長も反対していると報道※5しました。それに対して東芝は、「買収を拒否するような決定はない」と発表※6しました。

※5 参考:買収提案を拒否へ「上場維持は絶対」
※6 参考:一部報道について(PDF)

また、CVCキャピタル・パートナーズによる買収提案は初期段階で法的拘束力のないものであるため、現時点では評価することができないとしています。

イギリスの投資ファンドが買収検討を中断(2021年4月21日追記)

イギリスの投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズが買収の検討を中断した背景には、東芝との関係が変化したことにあります。4月6日に東芝に対して買収の初期提案をおこなったあと、4月14日にCVCキャピタル・パートナーズと関わりのある車谷社長が退任してしまいました。その結果、CVCキャピタル・パートナーズは具体的な買収の話を押し進めることが難しくなったのだと思われます。

一方で、東芝の新社長綱川氏をはじめとする経営陣は、CVCキャピタル・パートナーズが買収後の具体的な経営方針を示せていないため、買収提案を評価することは不可能だとしています。そのうえで、今後も企業価値を向上するための非公開化を排除するわけではないものの、現時点では「上場を維持するほうが、企業価値の向上につながると確信している」と発表しました※7

※7 参考:CVCからの初期提案について

まとめ

CVCキャピタル・パートナーズによる東芝のTOBについて解説しました。今回のTOBの目的は、経営陣と友好的なファンドに株主になってもらうことで、対立するエフィッシモを締め出し、自由に経営判断をおこなうためのものです。

しかし東芝は、CVCキャピタル・パートナーズと関わりのある車谷社長が退任し、綱川氏が新社長に就任しました。東芝のトップが変わったことで、CVCキャピタル・パートナーズは具体的な買収を押し進めることが困難になり、買収の検討を中断することとなりました。

東芝は非公開化という選択肢を完全に排除したわけではありませんが、上場を維持することが企業価値を高めることにつながるという考えを示したことで、東芝に対する買収のハードルはかなり高まったと言えます。

このように、東芝の経営陣が変わり上場維持に意欲を見せたことで、東芝をめぐる買収は不透明な状況です。また新しい情報が発表されたら、この記事に追加していきます。

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ゆうと

この記事の執筆者

ゆうと 

投資歴8年の資産バリュー投資家です。いつも四季報を持ち歩き、1年の半分は株のことを考えている株オタク。若手投資家同士の交流を目的とした「名古屋若手投資家交流会」を主催しています。

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