立会外分売(たちあいがいぶんばい)とは?
立会外分売(たちあいがいぶんばい)とは、企業などの大株主が所有する株式を、証券取引所の取引時間外(立会外)に売り出される取引です。一番の特徴は、普通に株取引をするよりも、割引価格でお得に買えることです。分売をおこなった日の終値を基準として、2~5%ほど安い価格で買えます。さらに、株式の購入手数料も無料です。
立会外分売をおこなう予定の銘柄や分売日は、数週間前~前日の間に発表されるため、こまめに証券会社のサイトをチェックする必要があります。バーゲンで掘り出し物を探す感覚ですね!ただ、毎回この作業をご自身でおこなうのは大変だと思いますので、最新情報は【2021年版】これから申し込みできる立会外分売まとめでご確認ください。当サイトが定期的に調査して、情報をまとめています。
<立会外分売の一例>
分売実施日 | 銘柄 | 前日終値 | 分売価格 (割引率) |
---|---|---|---|
2020年12月25日 | マーケットエンタープライズ(3135) | 1,834円 | 1,778円 (3.05%引き) |
2020年12月23日 | クロスフォー(7810) | 230円 | 223円 (3.04%引き) |
2020年12月22日 | SREホールディングス(2980) | 3,555円 | 3,448円 (3.01%引き) |
気になるのは、立会外分売が“好材料”なのか“悪材料”なのかということです。たとえ割安で買えたとしても、これが“悪材料”となり、株価が下落してしまっては意味がありません。その判断をするために、企業が立会外分売をする目的を知ることが重要です。
1.なぜ、立会外分売をするのか?
企業が立会外分売をする目的は大きく3つあります。
- ①株主の数を増やして指定替えをする
- ②株式の流動性を高める
- ③資金を調達する
1つ目は、「ジャスダック」、「マザーズ」、「二部」の上場企業がおこなうパターンです。株主の数を増やして、一部上場企業へのステップアップを狙います。一部上場は一流企業の証であり、企業イメージが向上します。
ただし、一部上場企業になるためには、株主が2,200人以上なければなりません。この条件をクリアするために、立会外分売をして株主の数を増やすのです。一部に指定替えになると、投資ファンドなどからの資金が流入しやすくなるため、株価は上がりやすくなります。
2つ目は、投資家が株を売買しやすくするためにおこないます。流動性の高い銘柄は、投資家が狙った金額で売買することができます。例えば、100円の銘柄があって投資家がそれをほしいと思った場合、流動性が高い銘柄は100円で手に入れられます。
一方、流動性が低いと売り手が少ないため、105円、110円などと、欲しい金額の提示がないケースがあるのです。流動性を高めることで売買が活発になり、株主が売買したい金額で取引をすることができます。
3つ目は、親会社が資金を調達するためにするためにおこないます。大株主の親会社が、子会社の持株を市場で売却して利益を得ます。親会社にとっては資金を得るメリットがありますが、立会外分売をする子会社にはありません。
通常、投資家にとって①と②は好材料、③は悪材料となります。
2.立会外分売とは具体的にどのようなものか
立会外分売がどのようなものか、2019年11月29日におこなった「オールアバウト(2454)」を例に見てみましょう。内容は、このようになっています。
実施目的 | 分売株式数 | 前日終値 | 分売価格 (割引率) |
---|---|---|---|
流動性向上のため | 70,000 | 684円 | 663円 (3.07%) |
立会外分売をおこなう前日の、11月28日の終値は684円でした。立会外分売をするにあたり、3.07%ディスカウントしました。663円で売り出すことを決めたのです。11月28日の夕方頃から申し込みを受け付け、翌日の8時台で終了となります。手にした株は、翌日に売ることができます。
オールアバウト(2454)の11月29日の始値は710円、高値は711円、安値は686円、終値は687円でした。立会外分売は即売り(当選した株をその日に売却すること)するケースが多く、軟調でのスタートとなりがちです。立会外分売は、企業が何をしたいのかを理解した上で、中長期での投資をおすすめします。
3.立会外分売とPO(公募・売出)の違いは?
株をディスカウント価格で手に入れる方法として、POがあります。POは新規で株式を発行したり、発行済みの株を売却したりすることをいいます。立会外分売とPOの違いは、大きく2つあります。
- ①規模
- ②期間
1つ目の規模の違いから説明します。POと立会外分売では、市場に放出する株数が圧倒的に異なります。例えば、オールアバウト(2454)がおこなった立会外分売の株数は70,000株でした。一方、2019年12月11日にエア・ウォーター(4088)がおこなったPOの株数は27,000,000株です。資金調達を目的とするPOは、大量の株式を市場に放出します。
2つ目として、申し込み期間がまったく異なることが挙げられます。立会外分売の申し込みは、先ほど説明したとおり、前日の「夕方から翌日の8時台まで※」です。申し込み期間は14時間ほどに限定されています。一方でPOは、申し込みから受け渡し日まで1週間ほどかかります。申し込みを経て株を手に入れ、翌日にすぐ売れる点は、立会外分売の大きなメリットの一つです。
※正確な時間は、証券会社によって異なります
4.投資家から見た立会外分売のメリット・デメリットなど
<立会外分売のメリット>
- 前営業日の終値から、数%割引(平均は3%くらい)で買えるのでお得です
- 株の購入手数料は無料(売却は有料)です。市場取引時間外(立会外)で購入するため、手数料はかかりません
<立会外分売のデメリット>
- 仮に、前日終値の数%引きで買えたとしても、取引時間開始後、株価が下がることもあります
- 購入できる時間帯は「午後6時頃から翌朝8時頃」の間です
- 分売予定日は変更になることもあるので、申し込んだ証券会社で確認が必要です
- 申込者が多い場合は、抽選で配分されることになります
<立会外分売を扱っている証券会社の例>
ネット証券の比較表 〔手数料は税抜〕 (2021年1月現在) | |||||
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証券会社名 (公式サイトへ) |
株式売買手数料 | 証券会社別 マル得情報 |
ネット証券 詳細情報へ |
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10万円まで | 20万円まで | 50万円まで | |||
松井証券 30,000円分 |
無料 | 300円 | 500円 | 10万円以下 手数料無料 |
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どの証券会社で申し込んでも「割引価格」などの条件は同じですが、複数の証券会社から申し込むことで、当選確率がアップします!他に利用したい取引と合わせて、ニーズに合う証券会社を選びましょう。
5.結局のところ、立会外分売は儲かるのか
結論を言いますと、立会外分売はIPOのように、短期的に大きな儲けを出すものではありません。市場に出回る株式数が多くなって希少性が失われるため、歓迎する投資家が少ないからです。2019年11月に立会外分売がおこなわれた銘柄を見てみましょう。右端の“損益率”に注目してください。
社名 | 実施日 (2019年) |
分売の値段 | ディスカウント率 | 翌日の始値 | 損益率 |
---|---|---|---|---|---|
オールアバウト | 11月29日 | 663円 | 3.07% | 710円 | 7.09% |
マーケットエンタープライズ | 11月28日 | 2,847円 | 2.50% | 2,870円 | 0.81% |
ギークス | 11月27日 | 1,475円 | 2.51% | 1,480円 | 0.34% |
バルテス | 11月27日 | 1,441円 | 2.44% | 1,500円 | 4.09% |
はごろもフーズ | 11月26日 | 2,595円 | 2.99% | 2,610円 | 0.58% |
システムリサーチ | 11月25日 | 1,730円 | 2.54% | 1,787円 | 3.29% |
川西倉庫 | 11月25日 | 1,020円 | 2.95% | 1,034円 | 1.37% |
アトラエ | 11月22日 | 3,400円 | 2.02% | 3,410円 | 0.29% |
イグニス | 11月22日 | 953円 | 3.05% | 953円 | 0.00% |
メディキット | 11月21日 | 6,654円 | 3.00% | 6,690円 | 0.54% |
ベネフィットジャパン | 11月21日 | 1,494円 | 2.03% | 1,544円 | 3.35% |
新家工業 | 11月20日 | 1,372円 | 2.97% | 1,422円 | 3.64% |
パシフィックネット | 11月12日 | 988円 | 3.04% | 998円 | 1.01% |
立会外分売で株を手に入れ、翌日始値で売った場合に得られる利益が損益率です。13銘柄のうち、プラスの銘柄は13社、プラスマイナスゼロが1社です、マイナスが0社です。この月はたまたまマイナスが出ませんでしたが、半数ほどマイナスになる月もあります。また、損益率を見てもわかる通り、二桁の利益が出るIPOとは違いがあることがわかると思います。
立会外分売は、株をディスカウント価格で手にすることができるチャンスです。しかし、ディスカウント率につられて飛びつくと痛い目に遭うこともあります。企業が何のために立会外分売をするのか、理解したうえで投資をしましょう。企業を理解することが、投資家として成長することの近道になります。
次のページでは、実際にSBI証券の取引画面を使って、立会外分売の解説をしていきます。こちらをご覧いただければ、どなたでも取引ができますので、合わせてご覧ください。
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