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www9945さんに取材しました(1)

ゆうと担当:ゆうと

公開日:2023年3月3日

投資歴30年目のベテラン投資家「www9945さん」に取材させていただきました。www9945さんはバリュー株※1と、日本やアメリカ、ベトナム、フィリピンなどへの分散した高配当株を土台にしつつ、街角ウォッチ※2で目についた銘柄などへの集中投資、信用取引も駆使したスカイツリー型ポートフォリオで投資をされています。

※1 バリュー株とは、「資産や業績などから評価して、株価が割安で放置されている株」のことです。
※2 街角ウォッチとは、街中を自分の足で定期的に歩くことで、にぎわっているお店や入れ替わったお店をチェックすることです。

そんなwww9945さんに、“投資手法”や、“投資を検討する際に注意すべきこと”などを詳しくうかがってきたので、ぜひご覧ください!インタビュアは、ゆうとがお送りします。

www9945さんの経歴
西暦 投資に関する主な出来事
1992年 台湾の実業家「邱永漢(キュウエイカン)」の言葉をきっかけに100万円で投資スタート。はじめて買った株はUBE(旧 宇部興産)(4208)北陸電力(9505)
1999年 業績好調ながら株価の下落が続いたプレナス(9945)が、東日本の本部を買収すると発表して株価が上昇してはじめて2倍株となった。その経験から自分のハンドルネームにプレナスの証券コード9945を使うようになる。
2002年 投資をはじめて10年間は資産が増えなかったが、インターネット証券の台頭やインターネットでの情報交流が盛んになる。ITバブルの崩壊や村上ファンドの出現などもあり、バリュー株優位の流れに乗って資産が増えはじめる。
2005年 不動産流動化ブームで主力のアセット・マネージャーズ※3が急騰して資産が資産が5,000万円を突破。
2008年 不況でも稼げそうな債権回収代行のジェーピーエヌ債権回収※4に、資産の50%以上を集中して投資をおこなうも、大失敗によりリーマンショックの影響で資産が約半分になる。
2010年 高配当を重視して、シンガポールリートやベトナム株を中心に投資。資産を5,000万円まで戻す。
2011年 東日本大震災後には円高が進行していたこともあり、シンガポールのREITやベトナム株などを買っていき、資産の25%が海外株になる。
2013年 初の著書「年収300万円、掃除夫の僕が1億円貯めた方法」を出版。
2014年 配当金で生活していける水準になったことで、専業投資家に転身。
2019年 業務スーパーを展開する神戸物産(3038)に資産の40%を投じ、その後約2.2倍となる。
2020年 新型コロナウイルスによる暴落を受けて、リーマンショック以来の大幅な資産の減少。信用取引もおこなっていたためFOOD & LIFE COMPANIES(3563)平和不動産(8803)などを売却するもその後2倍ほどまで株価が上昇して、取り逃すこととなる。

※3 現在の社名はいちご(2337)です。
※4 ジェーピーエヌ債権回収は、2009年に上場廃止しています。

 

投資をはじめたきっかけは?

ゆうと : 株式投資をはじめたきっかけは何ですか?

www9945さん :台湾でお金の神様と言われていた実業家「邱永漢(キュウエイカン)」さんが、とあるマネー雑誌で「株をやると儲かる、経済に明るくなる、会社に役立つ」と言っていたんです。将棋とか麻雀が好きだったからか、その言葉がスッと入ってきたんですね。当時、売買単位が1,000株単位で資金が必要だったこともあり、100万円を1年半で貯めて、そこからはじめたのがきっかけです。

ゆうと : なるほど。それで、はじめて買われた株はどの銘柄だったんですか?

www9945さん : 配当利回りが比較的良かった北陸電力(9505)を購入しました。当時バブルが崩壊して経済が落ち込んだので「公共投資をやろう」という機運があったんですよ。それで、セメント大手のUBE(旧 宇部興産)(4208)を、それぞれ100株と1,000株ずつ買って、投資金額は77万円でした。

ゆうと :  100万円分買ったわけではないんですね。

www9945さん : そうですね。残り23万円は、買える銘柄が本当になくて何も変えませんでした(笑)。

ゆうと : 今みたいに、5万10万で株を買える時代じゃなかったですからね(笑)。100万円の元手で株式投資をはじめられてから、現在の投資手法にいたるまではどういう経緯だったのでしょうか?

www9945さん : 1992年に投資をはじめてから最初の10年、2002年までは鳴かず飛ばずでしたね。年間100万円ずつ貯めてたんですよ。手取りの35%+ボーナスを夏と冬、半分以上貯めて突っ込んでいましたが、インターネットも発達してないので情報がなくてまったくわからなかったです。めちゃくちゃ上がる株は仕手株※5ばっかりでしたね。

※5 仕手株(してかぶ)とは、株価が意図的に操作されている銘柄のことです。

そういった形で実態のない銘柄ばかりが舞い上がってたので、全然儲かりませんでした。また、ひどい勘違いもしていました。例えば、3月期の会社は5月に今期の予想を出しますよね?あれが1年間通用すると思ってたんですよ。そしたら、10月に中間修正で大幅下方修正されて、なんだよと思って。あの半年前の約束はいったいなんだったんだみたいな(笑)。

ゆうと : 当時は今みたいに四半期決算じゃなくて半期決算ですからね。年に2回しかないので、その間の四半期がわかりませんよね。そのような感じで2002年まで鳴かず飛ばずとのことでしたが、2002年にはどんな転機があったのですか?

www9945さん : インターネットの発達です。ほかの投資家とつながりができたり、個人投資家が何を考えているかがわかるようになったりしました。あと、雑多な情報ですけど、掲示板などから情報を得られるようになりました。ただ、掲示板は95%が罵り合いでしたけどね(笑)。このように昔は情報を得ることがむずかしかったので、最近は「情報が多すぎる」とよく言われますが、情報がまったくないほうがマズいと思いますね。

ゆうと : 今はSNSやブログなどから情報をかんたんに取得できますからね。そういうことを経て、投資手法に変化はありましたか?

www9945 : きっかけは2000年1月に起こった村上ファンドによる昭栄※6への敵対的TOB※7です。日本ではじめての敵対的TOBが火付け役となり、その少しあとにも現金をため込んで株主還元に消極的だったソトー(3571)ユシロ化学工業(5013)にスティール・パートナーズが敵対的TOBをおこなうなど、一気にバリュー株ブームとなりました。

※6 現在は吸収合併によりヒューリック(3003)になっています。
※7 「敵対的TOB」とは、TOBをする側とされる側の関係が良好でないTOBのことです。TOBについて詳しくはこちらで解説しています。

PERやPBRが低くて自己資本比率が高いような会社を買っていればなんでもOKみたいな恐ろしい状態だったんですよ。

ゆうと : そういったファンダメンタルズを意識されたのがそのあたりですか?

www9945 : はい。あとそのときから、しんさんとか木下さんとか、いろいろ有名な方がYahoo!掲示板に集合してたんですよ。バフェットグレアム掲示板というやつがあって、私自身もそのときからずっと書き込んでましたね。あのときの資産バリュー株の恐ろしいところは、決算が悪いと次の日に株価が下がるんですが、2日後にはもう新値更新してるところなんですよね。

ゆうと : それだけバリュー株が評価されていて、人気だったということですね。

ゆうと : www9945さんも投資をはじめられて10年くらいはなかなか結果が出ずに苦労されてきたんですね。そのような中、インターネットの発達によって情報が取りやすくなり、掲示板などでほかの個人投資家の方と情報交換をおこなうことで、切磋琢磨されてきたわけですね!そういえば、かぶ1000さんも情報が取れずに苦しかったお話もされていたので、そちらも参考にしてください。

一点集中投資から分散投資、そしてスカイツリー型投資法へ

ゆうと : www9945さんといえば、高配当株を土台として信用取引も駆使した「スカイツリー型投資法」が有名だと思いますが、いつ頃からそのような投資スタイルになったのでしょうか?

www9945 : 今のスカイツリー型投資法が確立してきたのは、2011年から2012年くらいですね。

ゆうと : どのようにしてスカイツリー型投資法にいきついたのでしょうか?

www9945 : 2008年のリーマンショックの影響もあり資産が大きく減りましたが、同時に割安な株がゴロゴロしていたんですよね。それまでは結構気に入った銘柄があると信用取引も使った一点集中投資をおこなってきたのですが、基本に立ち返って高配当株や優待株、資産バリュー株を少しずつ買い足していきました。そのようにして分散投資されたポートフォリオ全体をみてみると、ときどき急騰する銘柄が出てくるんですよね。そのように動きの良い銘柄を信用取引で買い増していくことで、今のスカイツリー型投資法にいきつきました。

ゆうと : なるほど。まずは高配当株や優待株、資産バリュー株で土台がしっかりとできたことで、信用取引もうまく使えるようになったんですね!

www9945 : そうですね。スカイツリー型投資法が確立したことで、アベノミクス相場では大きく資産を増やすことができました。

ゆうと : ありがとうございます。ちなみに、その土台となった高配当株や外国株では、どういった銘柄や基準で選んでいますか?

www9945 : 当時分配金利回りが6%~7%くらいあったシンガポールリート(S-REIT)※8や、ボロボロに叩き売られていたベトナム株を買っていました。シンガポールドルは為替が安定していて日本みたいに地震の心配がありませんし、ベトナム株は下記のようなスクリーニングで出た銘柄を買っていましたね。

※8 シンガポールリート(S-REIT)とは、シンガポール証券取引所に上場している不動産投資信託(REIT)のことです。

www9945さんがおこなったベトナム株のスクリーニング
項目 数値
配当利回り 5%以上
ROE 20%以上
PER 10倍以下

また、日本株で配当利回りと優待利回りを合わせると6%~7%になるような銘柄を買っていました。ただし私は配当のほうを評価していますので、できるだけ配当のほうが高く、優待はおまけくらいのものを選んできました。

ゆうと : www9945さんのように信用取引の性質を理解して、タイミングを見極めたうえである程度の範囲内で活用する分には有効でしょう。また、土台となる現物株式の部分も高配当株の分散で構築されているため、リスクを低く押さえているのもポイントですね。ただし、信用取引は損失も大きくなるという諸刃の剣であるため、活用には十分に注意が必要でしょう。

高配当株に投資するときの注目ポイント

ゆうと : 高配当株に投資するときに注目しているポイントはありますか?

www9945さん : まず注意すべきポイントとしては、高配当株のなかでも「株価が下落を続けていて、配当利回りが上がって高配当になっている銘柄」です。こういった銘柄は買いません。なぜなら、配当金で受け取っている利益以上に、株価が下がることが多いからです。また、そういった銘柄は業績が悪くて減配する可能性もあります。

ゆうと : 株価が下がっているということは、何か悪材料があるかもしれない、潜んでいるかもしれないから、買わないということですね。では、逆にどういった高配当株は買いやすいですか?

www9945さん : ジワジワ増配している銘柄です。

ゆうと : ちなみに、それは連続増配じゃなくても、過去10年とかで見たときに、だいたいキチンと増配をしてきている感じでもいいのでしょうか?

www9945 : そうですね、段階的にでも増配しているものでも良いですね。あとは業績面でも営業利益を減らしていないかだとかを前提としてチェックしています。その他にもBtoBはあまり詳しくないこともあり、BtoCのわかりやすい銘柄を意識して買っていますね。

       

ゆうと : BtoCのわかりやすい銘柄というのは、高配当株に関わらず、すべての銘柄を選ぶときに重視されていますよね?

 

www9945 : そうですね。わかりやすいのはもちろん、ずっと保有し続けられますからね。

   

ゆうと : 配当利回りや配当性向などの重視している指標はありますか?

   

www9945 : 配当利回りが4%以上ですあるかは重視しますし、逆に配当性向が50%を超えているような高すぎるものはあまり好みませんね。

ゆうと : 確かに現在では配当利回りが4%以上ある銘柄がたくさんありますから、そのくらいの利回りは欲しいですよね。また、配当性向が高すぎると継続して配当できず、減配リスクも高くなりますからね。

ゆうと : www9945さんがおっしゃるような株価が下がって高配当株になっている銘柄や、配当性向の高過ぎる銘柄を避けて、増配傾向の中から選ぶという考え方は基本的なことです。しかし、現在配当利回りが4%を超えるような高配当株も珍しくなくなってきているので、とても重要な視点であると思われます。

成長株に投資するときの注目ポイント

ゆうと : 成長株を見るときに注目しているポイントはありますか?

www9945 : 街を歩いて銘柄を探す「街角ウォッチ」をはじめてみたんですよ。

www9945 : 百聞は一見にしかずで、実際見てみると結構わかりますし、会社四季報より早く見つけられます。また、そうやって見つけた銘柄は買った後も街角ウォッチで定期的にチェックしますから、継続して保有をしやすくなりますね。

そこで見つけたのが、「業務スーパー」の神戸物産(3038)です。タピオカブームのちょっと前のとき話題になりましたよね。このタピオカは業務スーパーが原料で卸していたんですけど、そういった銘柄とかですね。

ゆうと : 自分で実際に店舗に行ったり、サービス体験したりすることで、良し悪しがわかるということですね。よく見にいくところはあるんですか?

www9945 : ショッピングセンターとかは行きますね。ただ、今は繁華街がコロナの影響をまだ受けているのでむずかしいです。

ゆうと : そうですよね。最近やっと人も戻りつつあるのかなとは思うんですけど、やっぱり新型コロナウイルスの流行のせいで人の流れや消費の仕方も大きく変わっちゃったので、街角ウォッチはしにくいですよね。

www9945 : そうですね。ただ、逆にお店が潰れて次に何ができてくるかを見てます。潰れてしまったお店の特徴は、中間層から低価格層の人を相手にしてたお店です。例えば駄菓子店の「おかしのまちおか」は、駄菓子なので単価が安いじゃないですか。あと居酒屋さんとかチケットショップ屋さん、牛丼屋さんとか。そういったたぐいのお店がバタバタつぶれちゃって。

それでなにができたかというと、高級下着屋さんや猫カフェ、漢方薬屋、占いの館など、専門性が高く、利益率が高い業態に移行していましたね。

ゆうと : それだけ店舗を構えて、コストをかけてやるのがむずかしくなってるかもしれないってことですよね。だからこそ、粗利の高いビジネスならまだ出店しやすいんじゃないかってことですね。

www9945 : そうですね。あともうひとつは、今までお寿司屋さんだったら座って食べてたけど、改装したら立ち食い寿司になっちゃったりとか。あと、昔は普通のニューデイズだったけど「餃子の王将エクスプレス」といって、餃子とビールをかきこんですぐ駅に行くみたいな。

そういったデリバリー性というかポータビリ性があるような、地の利を利用した、時間を短縮するような業態が増えてきたんです。この2つがコロナ後、特徴的になりましたね。

ゆうと : www9945さんのように定期的に街を歩いて自分の足で銘柄を探すというのは、一見手間がかかるように思うかもしれません。しかし、そのようにして見つけた銘柄は継続して保有しやすく、逆に会社の成長鈍化などの変化にも気づきやすくなります。そのため、特に小売業やサービス業などのBtoCの成長株を見つけるには最適なように感じますね。www9945さんの投資手法については、2013年に出版された「年収300万円、掃除夫の僕が1億円貯めた方法」でも語られていますので、気になる方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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