シベール(2228)

公開日:2019年2月5日

成長性 0
割安性 0
収益性 0
財務健全性 0

※倒産による上場廃止のため★の評価はしていません。

山形・仙台の洋菓子メーカーであるシベール(2228)について、企業分析しました(シベールの公式ホームページ)。シベールは、2019年1月に民事再生法の適用を申請し、上場廃止が決まった銘柄です。増資などの予兆もなく、ひっそり倒産したシベールですが、証券会社のツールを使って財務諸表をチェックすれば、倒産の危険性をあらかじめ予測できたようです。今回は、証券会社のツールを使って、倒産する危険性のある会社を見抜く方法をご紹介します。

使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:やさしい株のはじめ方編集部)

シベール(2228)の倒産危険性をチェックするための注目ポイントは、以下の3点です。

  1. 流動比率が200%を下回っていないか(貸借対照表)
  2. 営業利益が出ているか(損益計算書)
  3. 営業キャッシュフローが赤字になっていないか(キャッシュフロー計算書)

さっそく、順番に見ていきましょう!

注意

分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。 銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

基礎情報(2018年8月期 実績値)

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
27億円 ▲1.8億円 ▲1.6億円 ▲3億円
時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
3億円 11.7倍 0.26倍 0%

株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

シベールの事業内容は、ラスク・焼菓子・洋生菓子・パンの製造と販売です。主力商品はラスクで、売上高の40%を占めています。店頭販売と通信販売の両方をおこなっており、セグメント構成を見ると、店舗販売が売上高の4分の3を占めていることがわかります。

直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかを知ることができます。

2019年8月期1Qの経常利益進捗率を見ると、-220.0%となっています。進捗率100%だと計画どおり、100%を超えれば業績好調、100%に達しなければ業績が想定よりも悪い、と判断します。シベールの場合は100%を下回るどころか、赤字で利益が出ておらず、マイナスの進捗率となっています。かなり業績が悪いことがわかりますね。

なぜシベールは倒産したのか?

シベール(2228)が倒産した最大の理由は、資金繰りがうまく行かなくなったことです。主力のラスクの売れ行きが落ち、3年連続赤字となったことで、手元の資金が底をついてしまったのです。

もう一歩踏み込んで理由を探ると、贈答品名目でラスクを買う人が減ったことがあります。最近は、お中元やお歳暮を贈る人が減っています。シベールのラスクは贈答品名目で買う人が多かったため、影響をもろに受けてしまったのです。

財務諸表から倒産の危険性を読み解く

シベールの場合、「資金繰りがうまく行っているかどうか」をチェックすることで、倒産を事前に予測できました。チェックポイントは、次の3つです。

  1. 流動比率の推移
  2. 営業利益の推移
  3. 営業キャッシュフローの推移

それぞれチェックしていきましょう。

流動比率の推移をチェック(貸借対照表)

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

シベールの貸借対照表を見て、「流動比率」をチェックしていきます。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を視覚的にチェックできるので便利です。

流動比率とは、「1年以内に返さなければいけない借金を、1年以内に現金化できる資産でまかなえるかどうか」を測る比率です。「流動資産※1÷流動負債※2」で計算できます。一般的に、流動比率は200%以上だと安全といわれています。

※1 流動資産とは、1年以内に現金化できる資産のことで、現金や預金、商品の在庫などが含まれます
※2 流動負債とは、1年以内に返さなければいけない借金のことです

シベールの流動比率を見てみましょう。GMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、計算しなくても視覚的に流動比率をチェックできます。上の図を見ると、左側の資産に計上されている流動資産は、右側の負債・資本に計上されている流動負債よりも少なく、流動比率は100%を下回っています

つまり、銀行から借金の全額返済を迫られた場合、1年以内に現金化して返せるお金が、借金返済額に満たないため、お金を返せずに倒産してしまうことがわかります。

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

今度は、過去10年分を見てみましょう。10年分さかのぼってチェックすることで、分析している会社がどのように変化してきたかを知れます。これを見ると、10年をとおして流動比率が100%以下であることがわかりますね。シベールは、10年もの間、いつ倒産してもおかしくない状況にあったのです。

営業利益の推移をチェック(損益計算書)

過去~現在~未来まで10年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去10年分の売上高と営業利益をグラフ化したものです。売上高が毎年減っており、2014年8月から営業利益がマイナスに転落していることがわかります。贈り物としてラスクを買う人が減り、損益分岐点を下回ってしまったことが読み取れます。

本業で利益が生み出せていないため、事業を続けるためには、純資産を切り崩さなければなりません。これによって、企業が持つ現金が減り、さらに資金繰りが苦しくなります。売上高が何年にもわたって減り続け、営業利益が赤字になったときには、倒産する可能性が高まっていると言えます。

営業キャッシュフローの推移をチェック(キャッシュフロー計算書)

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

シベールのキャッシュフロー(CF)を見てみましょう。営業キャッシュフローが年々小さくなり財務キャッシュフローの赤字額が小さくなる傾向が見られます。営業キャッシュフローが小さくなっているのは、本業で利益を生み出せなくなっていることが原因です。2018年8月期には、ついに営業キャッシュフローが赤字となってしまいました。

財務キャッシュフローの赤字額が小さくなっているのは、財務キャッシュフローのプラス要因である銀行への返済が多いためです。この変化から、銀行にとってシベールの信用が下がっていることが推測できます。

2015年8月期 2016年8月期 2017年8月期 2018年8月期
長期借入金 - 6.7億円 3.5億円 1億円
短期借入金 - - - 2億円
長期借入の返済 ▲2.9億円 ▲3.3億円 ▲3.9億円 ▲3.6億円

上の表は、2015年8月期から2018年8月期までの財務キャッシュフローに計上されている、借入金に関する科目を抜き出したものです。これを見ると、借入金が減り、返済額が増えていることが読み取れます。おそらく、銀行は貸したお金を回収できないと判断し、貸出額を減らし返済額を増やしたと考えられます。

極めつけは、2018年8月期の短期借入金です。これまで、長期借入金で資金調達していましたが、2018年8月期に短期借入金が登場しました。管理人の推測にすぎませんが、長期で貸し付けると回収できない危険が高まると判断し、短期での貸し付けに変更したのだと思われます。このことからも、シベールの倒産を予測できたのではないでしょうか。

シベールを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 証券会社 ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

まとめ

シベールの倒産を事前に予測する方法を見てきました。シベールは優待銘柄として人気が高く、財務諸表を読まずに投資し、損した人も多かったようです。今後同じような失敗をしないためにも、証券会社の無料のツールを使って、投資する前に下の3つのポイントをチェックしましょう。

  1. 流動比率が200%を下回っていないか(貸借対照表)
  2. 営業利益が出ているか(損益計算書)
  3. 営業キャッシュフローが赤字になっていないか(キャッシュフロー計算書)

自分のお金を守れるのは、自分しかいません。優待目的でも資産運用目的でも、倒産しそうな会社を避け、優良な会社に投資できるように勉強していきましょう。

注意

ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。また、このページの分析は、記事公開時の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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