伊藤園の優先株は、なぜ安いのか教えてください
伊藤園の優先株は、普通株よりも株価が安くなっています。その理由を教えてください。
伊藤園の優先株が安い理由は、次の2つが考えられます。
- 優先株には議決権がない
- 優先株はTOPIX対象銘柄ではない
この2点により、普通株の「伊藤園(2593)」と「伊藤園第1種優先株式(25935)」の株価に差が生まれています。
<伊藤園第1種優先株式(25935)の株価推移(20年)>
(出典:SBI証券)
優先株には議決権がない
伊藤園の普通株と優先株の違いをまとめると、下の表のようになります。
銘柄名(銘柄コード) | 議決権 | 配当 | 残余財産分配 | 株主優待 |
---|---|---|---|---|
伊藤園第1種優先株式(25935) | なし | 普通株の配当額×125% 未払い分は累積 |
普通株と同等 | あり |
伊藤園(2593) | あり | 配当の累積なし | - | あり |
(2022年5月現在)
普通株と優先株の違いは、議決権の有無と配当の金額の2つです。優先株は、議決権が付いていない代わりに、配当が多くもらえます。「配当が普通株の25%増しでもらえる」というのは、投資家にとってうれしいことなので、理論的には株価が高くなるはずですよね。
ここで、優先株と普通株のそれぞれについて、優先株発行時(2007年9月3日)と現在(2022年5月11日)の2時点で比べてみましょう。
項目 | 優先株発行時 (2007年9月3日) |
現在 (2022年5月11日) |
---|---|---|
優先株の株価(終値) | 2,795円 | 1,892円 |
普通株の株価(終値) | 2,930円 | 5,580円 |
差額(優先株−普通株) | △135円 | △3,688円 |
優先株は普通株よりも株価が安く、差額は優先株発行時よりも拡大しています。したがって、優先株は「議決権がない」ためディスカウントされていると考えられるのです。
優先株はTOPIX対象銘柄ではない
優先株の方が普通株より株価が低いもう1つの理由には、「TOPIX対象銘柄ではない」ことが挙げられます。TOPIX対処銘柄ではない優先株は、「日銀のETF買い」による買い注文が入らないからです。
日銀が購入対象にしたETFは、TOPIX連動型と日経平均連動型の2つです。つまり、TOPIX対象銘柄である普通株は、日銀のETF買いの影響により、買い注文が多く入ります。その結果、株価が上がりやすくなるのです。
一方、優先株はTOPIX対象銘柄ではないので、日銀のETF買いの影響を受けなかったと考えられます。そのため、普通株と比べて株価が上がりにくく、結果として普通株と優先株の差額が広がったと考えられます。
それでは、実際に日銀のETF買いの影響がどれくらいあったのかを調べてみましょう。日銀のETF買いがはじまった2010年12月15日時点の株価と、現在(2022年5月11日)の株価を比べてみます。
項目 | 日銀のETF買い開始日 (2010年12月15日) |
現在 (2022年5月11日) |
株価の上昇率 |
---|---|---|---|
優先株の株価(終値) | 988円 | 1,892円 | +91.5% |
普通株の株価(終値) | 1,363円 | 5,580円 | +309.4% |
優先株は、普通株と比べて株価の上昇率が高くありませんね。TOPIX対象銘柄でないため、買い注文が多く入らなかったと考えると、普通株より上昇率が低いのも納得できます。
配当狙いなら優先株がおすすめ
伊藤園の優先株と普通株について、配当金額と配当利回りを比べてみましょう。
項目 | 配当金額 | 配当利回り |
---|---|---|
優先株 | 50円 | 2.64% |
普通株 | 40円 | 0.72% |
(2022年5月11日現在)
普通株よりも優先株のほうが、配当利回りが2ポイントほど高くなっています。配当狙いで投資するなら、優先株への投資がおすすめです。
伊藤園の優先株が普通株より安い理由は、議決権が付いていないからです。その代わり、普通株よりも多くの配当がもらえ、配当利回りが高くなっています。
また、普通株と同じように株主優待がもらえます。「議決権はいらないから、配当がたくさんもらえたり、優待がもらえたりするほうがうれしい」という方は、優先株への投資を検討してもいいかもしれませんね。
サイト内の参考ページ
この質問を見た人は、こちらも読んでいます
お悩みをキーワードで検索する
お悩み検索
他のお悩みを検索できます
投資歴18年目の株初心者アドバイザーです。2005年からの投資成績は+2億円を突破しました!2009年に発売した著書『はじめての株1年生 新・儲かるしくみ損する理由がわかる本』は、累計59,000部のロングセラー。その他、数多くの金融系メディアにも寄稿しています。