理論株価とは?意味や計算式のほか「本当にあてにならないのか」を解説します

理論株価とは?意味や計算式のほか「本当にあてにならないのか」を解説します

担当:西尾

担当・にしけい

最終更新日:2021年5月31日

理論株価(りろんかぶか)」とは、会社が持っている価値(企業価値)を元に計算された株価です。その会社の「あるべき株価」とも言えます。理論株価は、市場で付いている株価と比べて使います。もし「理論株価>市場で付いている株価」となれば、その銘柄は割安です。PERと同じように、投資判断に使える指標となっています。株式投資で利益を出すためにチェックしたい指標です。

割安性PERで判断できるので、「わざわざ理論株価を学ぶ必要はない」と考える方がほとんどではないでしょうか。しかし、PERは厳密に割安性を測るのがむずかしい指標です※1この点で、理論株価は会社の価値を元に計算しているので、PERよりも厳密に割安性が測れます

※1 PERは「株価÷1株あたりの利益」で計算します。計算で使う「利益」は、あくまで決算書上の数字であり、会社が意図的に操作できます。そのため、PERを使えば厳密に割安性を測れるわけではありません。

このコラムでは、理論株価の計算式や考え方はもちろん、投資家の間でよく議論されている「理論株価はあてにならないのか?」などを解説していきます。

1.理論株価の計算式

理論株価=(事業価値財産価値有利子負債)÷発行済株式数

理論株価は、上の計算式で求められます。計算式を見ただけでは理解できないので、各項目を説明します。ただし、理論株価の計算はかなりむずかしいので、株初心者は無理に理解しようとする必要はありません。計算方法を理解しなくても、GMOクリック証券財務分析ツールを使えば、自動で計算してくれます。

そのため、興味がある方だけ、ここから下の解説を読んでください。それ以外の方は、3.理論株価を自動で計算してくれるツールをご覧ください。

1-1.事業価値とは?

事業価値とは、会社が運営する事業の価値です。「将来、会社がどれだけのフリーキャッシュフロー※2を生み出せるか」で決まります。フリーキャッシュフロー(以下、FCF)とは、会社が自由に使えるお金の額を表すのもので、会社が生み出す付加価値と考えておけば良いです。理論株価を計算するときに最も大変な部分なので、理解できなくても問題ありません。

※2 フリーキャッシュフローとは、会社が自由に使えるお金です。「営業CF+投資CF」で計算できます。キャッシュフローの使い方は、キャッシュフロー計算書で詳しく解説しています。

事業価値を計算する手順を整理すると、下のようになります。

  • ①会社が生み出す将来のFCFを1年ごとに予想する
    (今回は5年分のFCFを予想。6年目以降は継続価値※3としてざっくり算出)
  • ②①で予想したFCFを現在の価値に修正する
  • ③②で現在の価値に修正したFCFを合計する

※3 継続価値とは、会社が将来生み出すフリーキャッシュフローの大体の合計額です。ざっくりした事業価値と考えておけばOKです。

この手順を図に表すと、下のようになります。事業価値は、会社が毎年生み出すキャッシュフロー(付加価値)によって決まることがイメージできますね。

事業価値の計算

上の図について、2点補足します。まずは、1年目から5年目までのFCFが同じ金額になっている点です。これは図を見やすくするためにそろえているだけなので、実際は年によってFCFの金額にブレが生じます。また、成長している会社であれば、FCFの金額は毎年増えていくでしょう。

もう1点は、6年目以降の継続価値についてです。この事例の継続価値は、6年目以降に会社が続く限り生み出すFCFの合計を、ざっくりと予想したものと考えてください。そのため、5年目までのFCFよりも金額が大きくなっているのです。なお、継続価値を計算する際は、「6年目以降は毎年5%成長が見込める」のように、成長率を一定にして計算します。

ポイント!

③FCFの合計額を現在の価値に修正する」について、かんたんに補足します。

  • 今すぐに100万円がもらえる権利
  • 1年後に100万円がもらえる権利

上の2つの権利があるとしましょう。どちらも“100万円がもらえる”点では同じですよね。しかし、「今すぐに100万円がもらえる権利」には100万円の価値がありますが、「1年後に100万円がもらえる権利」には100万円以下の価値しかありません。

理由は、今すぐに100万円をもらって投資信託を買えば、1年後に100万円以上になっている可能性が高いからです。例えば、年率3%の投資信託を100万円分買えば、1年後には103万円になっています。

しかし、1年後に100万円をもらう場合はどうでしょうか。1年間投資信託で運用できないので、100万円のままです。これは、今すぐに97万円をもらって、年率3%の投資信託を買ったのと同じです。つまり、将来の価値は現在の価値より小さくなるので、理論株価を出すときに修正が必要となります。

1-2.財産価値とは?

財産価値とは、会社が持っている財産の価値です。ざっくり“貸借対照表に載っている資産を合計したもの”と考えておけば問題ありません。GMOクリック証券財務分析ツールを使って財産価値を表すと、下の赤枠となります。

トヨタ自動車(7203)の貸借対照表>

トヨタ自動車の貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

ポイント!

財産価値は“貸借対照表の資産を合計したもの”と考えておけば良いとお伝えしましたが、厳密に計算する場合はもう少し複雑な計算が必要になります。

理由は、会社が持っている資産は、すべてが「貸借対照表に載っている金額」で現金化できるとは限らないからです。例えば、現金は換金する必要がなく目減りもしないので、貸借対照表の金額のまま使えます。しかし、売掛金や建物などは、必ずしも貸借対照表の金額で現金化できるとは限りません。

そのため、「売掛金は貸借対照表の金額の90%に直す」といった作業が必要になるのです。厳密に財産価値を計算したい場合は、貸借対照表の金額をそのまま使えない点に注意しましょう。

また、GMOクリック証券財務分析ツールを使えば、財産価値を自動で計算してくれます。わざわざ貸借対照表の実物を見ながら計算する必要はありません。便利なツールを使って、効率よく企業分析したいですね!

1-3.有利子負債とは?

有利子負債とは、銀行からの借金です。こちらも、“貸借対照表に載っている借入金や社債を合計したもの”と考えておけば、問題ありません。GMOクリック証券財務分析ツールを使って有利子負債を表すと、下の赤枠となります。

トヨタ自動車(7203)の貸借対照表>

トヨタ自動車の貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

2.理論株価はあてにならないのか?

Twitterやブログなどで、「理論株価はあてにならない」と書かれているときがあります。本当に理論株価はあてにならないのでしょうか?この疑問を解き明かすためにも、理論株価のメリットとデメリットを見ていきましょう。

<理論株価を使うメリット>

  • 会社の将来を織り込んだ指標である
  • 会社の価値を表す「事業価値」をベースに計算している

<理論株価を使うデメリット>

  • 事業価値の計算で必要なFCFを正確に予測するのがむずかしい
  • 急成長している会社のように、将来の業績が予想しづらい場合は参考にならない

理論株価には、上のようなメリットとデメリットがあります。個人的にはメリットがデメリットを上回ると考えており、投資判断の際に理論株価を使っています。理由は、理論株価は「事業価値をベースにした」株価指標だからです。

株を買うときは、できるだけ割安に買いたいですよね。その際、多くの方はPERを使うのではないでしょうか。PERはかんたんに使える点が魅力的ですが、落とし穴があります。それは次の2点です。

PERの2つの落とし穴>

  • 会社が意図的にいじれてしまう「利益」を使っている
  • 計算に使う「株価」と「利益」は、事業価値とは無関係な数字である

PERはかんたんで使いやすい反面、会社が意図的に手を加えられる指標であり、会社の価値についての話がまったく含まれていないので、割安性を判断するには少し物足りないのです。もちろん、PERは多くの投資家が使っているので、ある程度は割安性を判断するツールとして使えます。しかし、“PERが低いから割安だと思って買ったら、実は割高で株価が下がった”という現象から理解できるように、PERでは厳密に割安性を測れないのです。

この点で、理論株価は事業価値をベースに計算されており会社が操作できない指標なので、割安性を判断するときにかなり役立つツールだと言えます。「誰も正確に将来を予想できるわけがない」という反論はあるものの、企業をしっかり分析すれば、「年平均で〇%程度は成長しそうだ」と予想が立てられます。100%予想を当てるのは不可能だとしても、ある程度は予想できるでしょう。

以上の理由から、理論株価はあてになると考えています。もちろん、理論株価には「FCFを正確に予想できない」などのデメリットがあるのは確かなので、理論株価だけで投資判断するのは危険です。PERなど他の指標とセットで使い、総合的に判断すると良いでしょう。

3.理論株価を自動で計算してくれるツール

もう一度、理論株価の計算式を確認しましょう。

理論株価=(事業価値+財産価値-有利子負債)÷発行済株式数

理論株価の計算では、事業価値を求めるのが最も大変な作業です。1-1.事業価値とは?で説明したとおり、フリーキャッシュフローを予測し、合計し、現在価値に直す作業が必要となります。この計算はかなり骨が折れるので、できればやりたくないですよね。

ここでみなさんに朗報です。実は、理論株価を自動で計算してくれるツールがあります。それは、GMOクリック証券が出している「財務分析ツール」です。下のような画面になっており、理論株価が自動で計算され、現在の株価と比較できるようになっています。

トヨタ自動車(7203)の理論株価>

トヨタ自動車の理論株価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

このツールによると、トヨタ自動車の理論株価は14,220円(2020年3月期決算から算出)となっています。株価は9,135円(2021年5月28日時点)なので、現在の株価は理論株価と比べて40%も割安な水準となっているのです。このように、GMOクリック証券のツールを使うと、理論株価と現在の株価を比べて、かんたんに割安性を判断できます。

他にも、GMOクリック証券のツールには、売上高や営業利益の推移、貸借対照表の内訳などが載っています。企業分析のときに役立つツールが詰まっており、口座を持っている方なら誰でも無料で使えるので、口座開設しておくと良いでしょう。GMOクリック証券への口座開設方法は、GMOクリック証券の口座開設ガイドで紹介しています。

4.まとめ

理論株価とは、会社が持っている価値を元に計算された株価です。理論株価と市場で付いている株価を比べると、その株の割安性がわかります。PERなど他の株価指標とセットで使い、投資判断を下すと良いでしょう。

複雑な計算が必要なのがマイナスポイントですが、GMOクリック証券財務分析ツールを使えば、理論株価を自動で計算してくれます。頭を悩ませながら時間をかけて計算しなくて良くなるので、口座開設していつでも財務分析ツールを使えるようにしておきましょう。

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この記事の執筆者

にしけい
「やさしい株のはじめ方」の資産運用担当です。ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格を保有しています。年間200銘柄以上を分析中。

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