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【株式用語】ADR(米国預託証券)とは?見方や投資方法、日本株・インド株・台湾株の銘柄例もわかりやすく解説

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2025年4月17日

株式投資におけるADR(米国預託証券)とは、米国市場で取引できる中国やインドなどの外国株式を表します。例えば、米国市場に上場しているバイドゥ(中国本土株)や台湾積体電路製造(TSMC)(台湾株)などの銘柄がこれにあたります。

インド株など外国人が投資できないように規制がかかっている国の株式には、通常であれば外国人が投資できません。しかし、ADRとして米国市場に上場することで、外国人も自由に投資できるようになるのです。

このコラムでは、ADRの見方や投資方法、仕組み、取引するメリット、銘柄例などを、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
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ADRとは?見方や取引方法もわかりやすく解説

ADR(米国預託証券)とは、米国預託証券の英語表記「American Depositary Receipt」の頭文字の略語で、かんたんに言うと、「米国市場で取引できる外国株式」のことを指します。

実は、中国本土株やインド株、ブラジル株などは、そのままだと現地の国の人以外は株を買えません。外国人の取引に規制がかかっているからです。これらの株を、外国人も自由に取引できるよう、「米国株式市場」に上場させたものがADRです。

対象銘柄は、名前の語尾に“ADR”と書かれています(例:“百度(バイドゥ) A ADR”)。米国市場に上場されることにより、本来買えない株を取り引きできるようになるので、気になる銘柄があればぜひチェックしてみてください。

ADRの一例と見方を解説(SBI証券)

以下に、ADRの一例をご紹介します。

ADRの代表的な銘柄
銘柄名 ティッカーコード 事業内容
バイドゥ
(百度)
BIDU 中国の大手検索エンジン 中国本土株
台湾積体電路製造
(TSMC)
TSM 半導体メーカー 台湾株
ペトロブラス PBR エネルギー会社 ブラジル株

試しに、SBI証券で「バイドゥ(百度)」を検索してみると、中国株式市場では見つかりませんでしたが…

中国株式市場では取引できない

米国株式市場では見つかりました! 銘柄名を見ると、「百度(バイドゥ) A ADR」と書かれており、語尾にADRがついているのがわかります。

米国株式市場では取引できる

☆上の画面は、SBI証券の外国株式口座を開くと使えるようになる、外貨建商品取引サイトです。SBI証券の口座をお持ちでない方は、証券総合口座と外国株式口座の開設手続きを同時におこなえるので、最短で申し込み完了と同時に使えるようになります♪

また、SBI証券の総合証券口座・外国株式口座の開設手順は、実際の画像付きでわかりやすく解説しているので、以下のページを見ながら作ってみてください。

ポイント

ADRは、日本語で「米国預託証券」と言われるように、厳密には「預り証」であり、株式ではありません。しかし、ADR自体は株式をもとにして発行されているので、ADRには株式とほぼ同じ権利があります。当然、配当金も受け取れますし、株主として議決権も使えます。そのため、「ADR=株式」と考えて大丈夫です。

ADRの仕組み

ADRの仕組みを理解するために、“ADRを発行する流れ”を順番に追っていきましょう。下の図をご覧ください。

<ADRを発行する流れ>

ADRを発行する流れ

(出典:楽天証券

ADRを発行する際は、下の3つの手順を踏みます。

ADRを発行する手順

  1. C銀行が現地でB社の株式を買い付け、現地の銀行に保管する
  2. C銀行が現地の銀行に保管したB社の株式に対する「預り証(ADR)」をアメリカ国内で発行
  3. C銀行がB社株式のADRを上場させる

こうすることで、外国人に投資規制がかかっている国の銘柄であっても、間接的に投資できるようになります。

ただし例外もあり、“外国人への投資規制がない銘柄”もADRとして上場しています。例えば、日本の任天堂(7974)ソフトバンクグループ(9984)、イギリスのアーム・ホールディングスやグラクソ・スミスクラインなどです。

このような銘柄は、世界でも有名な会社なので、アメリカの投資家から上場を求められていました。そのため、ADRを使って上場しているのです。

ADRの取引では、証券会社に支払う取引手数料や為替手数料以外にも、ADRを発行する金融機関(預託銀行)に対する「管理費用」が発生します。管理費用の一般的な金額は、四半期~1年ごとに1株あたり0.25~5セント程度です。証券口座にある米ドルの預り金から引き落とされたり、配当金の支払いと同時に差し引かれたりします。

ADRを取引するメリット

ADRを取引するメリットがあるのは、次の3つの条件に当てはまる投資家です。

  1. インド株など、現地規制がかかっている国の株式に投資したい
  2. ヨーロッパ株など外国の有名企業に投資したい
  3. 日本株のオプション取引をしたい

それぞれ説明します。

現地規制がかかっている外国の株式に投資したい

ADRの仕組みで説明したように、現地規制がかかっている中国本土・インド・ブラジルなどの株式に投資できます。中国本土の「アリババグループ」やインドの「タタ・モータース」など、成長性の高い会社が多いのが魅力です。

ヨーロッパ株など外国の有名企業に投資したい

イギリスやドイツなど、ヨーロッパの株式もADRとして上場しています。中国本土やインドのような外国人に対する取引規制はありませんが、アメリカの投資家からの強い要望によって、ADRとして上場しました。

私たち日本人も、アメリカ株を買うのと同じ要領で、外国の有名企業のADRを取引できます。ソフトバンクグループが投資しているイギリスの「アーム・ホールディングス」や、ドイツの鉄道車両メーカー「シーメンス」などを、手軽に取引できるのが魅力ですね。

日本株のオプション取引をしたい

日本株の一部が、ADRとしてアメリカの証券取引所に上場していると紹介しました。実は、アメリカに上場している日本株のADRは、日本の証券取引所に上場している株式よりも、オプション取引に向いています。ADRがオプション取引に向いている理由は、日本とアメリカでは、株式の売買単位が違うからです。

日本 アメリカ
売買単位 100株~ 1株~

日本には、「単元株制度」が設けられているため、基本的に株式は「100株」セットでしか買えません※1。そのため、株を買うためには、数万円~数百万円の資金が必要です。これはオプション取引※2も同じで、必要となる資金(以下、証拠金)が多くなります。

※1 SBI証券やマネックス証券などの一部の証券会社では、100株以下の「単元未満株」を取引できます。
※2 オプション取引については、デリバティブとは?わかりやすく解説しますをご覧ください。

一方、ADRは「1株から取引できる」アメリカの証券取引所に上場しています。つまり、日本とは違い、任天堂やソフトバンクグループなどに「1株から」投資できるのです。オプション取引も同じなので、必要な証拠金が少なくて済みます

さらに、オプション取引の証拠金が少ないため、参加者がとても多くなっています。その分、取引をスムーズにおこなえる(=流動性が高い)ので、日本でオプション取引するよりも便利です。

以上の理由から、ADRはオプション取引に向いています。なお、ADRとして上場している日本企業は約300銘柄です。2025年4月末現在、日本の上場銘柄は約3,900社なので、そこまで多くはありません。具体的な銘柄は、「① 日本株のADR」で紹介しています。ご自分がオプション取引したい銘柄が、ADRとして上場している場合は、活用を考えてみてください。

ADRの例

それでは、実際にどのような企業がADRとして米国株式市場に上場しているかをみていきましょう。今回は下記3か国のADRを紹介します。

① 日本株のADR

インド株と違い、日本株には外国人の取引規制はかけられていません。しかし、アメリカの証券取引所にADRとして上場している日本株が、約300銘柄あります。その一部を、下の表にまとめました。誰もが一度は名前を聞いたことがあるであろう、超有名企業が名を連ねています。

日本株のADR
銘柄名 ティッカー
コード
事業内容
任天堂 NTDOY 世界的な家庭用ゲーム機&ソフトメーカー。代表的なゲームソフトとして、「スーパーマリオ」や「ポケットモンスター」、「スプラトゥーン」などがある。
ソフトバンクグループ SFTBY 世界を代表するIT投資会社。AIを活用した成長力の高い企業へ投資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が有名。子会社に通信会社のソフトバンクやLINEヤフーを持つ。
トヨタ自動車 TM 自動車販売台数で世界首位。現地生産を基盤に、コンパクトカーやセダン、SUVなどを製造・販売している。
武田薬品工業 TAK 国内トップのグローバル製薬会社。がん、中枢神経、消化器、希少疾患などに重点を置いている。
ソニー SNE エレクトロニクス(半導体・電子デバイスなど)、エンターテイメント(家庭用ゲーム機・音楽など)の分野で世界的に事業を展開。

ADRには、日本の証券コードとは別に、アルファベットのティッカーコードが付けられています。任天堂の場合は、日本の証券コードは「7974」ですが、ティッカーコードは「NTDOY」となっています。

有名な会社であれば、ADRを使うと「1株から取引できる」のが魅力です。しかし、1つ注意しなければいけないことがあります。それは、日本の株式市場で付いている株価と、ADRの価格に(わずかですが)差がある点です。

例として、任天堂についてみていきましょう。2022年4月14日の終値について、日本の株式市場で付いている株価と、ADRの価格をまとめました。

日本(株式) アメリカ(ADR)
価格 64,960円 64,110円

このように、日本とアメリカでは価格に差があります。理論上は、日本で取引されている株券をもとにADRが発行されているので、「日本で付いている株価=ADRの価格」となります。しかし、ADRの需要と供給のバランスによっては、ADRの価格が日本で付いている株価と比べて、大きく上がったり、下がったりする場合があるのです。

そのため、日本企業のADRを取引する際は、必ずしも日本で付いている株価とは一致しない点に、注意しておきましょう。

② インド株のADR

インド株では、自動車メーカーである「タタ・モーターズ」、民間銀行大手の「HDFC銀行」や「ICICI銀行」などが有名です。タタ・モーターズは2023年にADRが上場廃止になってしまいましたが、HDFC銀行やICICI銀行などはADRで取引できます。

先ほど説明したように、インド株には現地規制が掛かっています。直接的に株式を買うことはできませんが、ADRで間接的かつお手軽に投資できるのはうれしいですね。

インド株のADR
銘柄名 ティッカー
コード
事業内容
HDFC銀行 HDB インドの商業銀行。中・高所得層の個人と企業に対し、預金や貸出などのサービスを提供している。
ICICI銀行 IBN 世界銀行とインド政府の主導で1955年に設立された「開発金融機関」が母体。インドで2番目の規模を誇る市中銀行である。
インフォシス INFY ITコンサルティング企業。2017年には、次世代のAIプラットフォーム「Infosys Nia」を発表。AIが分析や意思決定を支援し、ビジネス課題の解決をサポートしている。
ドクター・レディーズ・
ラボラトリーズ
RDY ジェネリック医薬品メーカー。傘下のバイオテクノロジー企業を通じて、腫瘍・炎症の治療法開発も手がける。
ウィプロ WIT ITサービス会社。祖業は食用油メーカーで、1980年代にIT分野に進出した。日本にも拠点を持つ多国籍企業。

インド株は、インド経済の成長性の高さから投資家の注目を集めています。世界銀行によると、2023年4月から2024年3月の経済成長率は7.5%と予想されており、これは同じ期間における世界全体の経済成長率予想値2.4%を上回る水準です。

インド経済の成長が予想されている背景には、人口が増加していることやインフラ投資が積極的におこなわれていること、IT産業での存在感が高まっていることなどが挙げられます。

また、IMF(国際通貨基金)の推計によると、インドの名目GDPは2025年に4兆3,398億ドルになると予想されています。日本を抜いて世界4位にランクインする見通しです。さらに、インド財務省は名目GDPが2030年までに7兆ドルに到達すると見込んでいます。このことからも、今後も高い成長が続く可能性が高いと言えるでしょう。

インド経済が今後も成長していけば、上に挙げたインド企業の業績も成長していくと考えられます。インド経済に興味を持っている方は、ADRで個別銘柄に投資することも検討してはいかがでしょうか。

③ 台湾株のADR

続いて、台湾株のADRをいくつか紹介します。台湾株と言えば、世界最大の半導体受託製造企業である「TSMC(台湾積体電路製造)」が最も有名です。

これ以外にも、台湾株には半導体関連企業が多く存在しています。半導体関連で投資先を探している方は、台湾株のADRから探すのもおもしろいかもしれませんね。

台湾株のADR
銘柄名 ティッカー
コード
事業内容
台湾積体電路製造
(TSMC)
TSM 世界最大の半導体受託製造企業。顧客企業から提供された独自設計に基づき、多種多様な半導体を製造している。インテルやNVIDIAなどが主な顧客として挙げられる。
日月光投資控股
(ASEテクノロジーホールディング)
ASX 半導体の外注組み立てや検査、包装などのサービスを提供。
聯華電子
(ユナイテッド・
マイクロエレクトロニクス)
INFY 世界シェア4位の半導体受託製造企業。半導体検査や組み立てサービスも提供。
奇景光電
(ハイマックス・テクノロジーズ)
HIMX 画像処理を中心とした半導体ソリューションを提供。
中華電信
(チョンファ・テレコム)
CHT 台湾で企業や個人向けに統合的通信サービスを提供。

日本人が台湾株そのものを取引するためには、台湾株の取り扱いがあるアイザワ証券で取引するしかありません。しかし、ADRを使えば米国株と同じような感覚で取引可能です。台湾株に興味を持っている方は、ADRの利用を検討してみましょう。

ADRを取引できる証券会社

ADRを取引できる証券会社を紹介します。基本的にADRは米国株と同じように取引可能です。米国株の取引手数料や為替手数料が低い証券会社や、ADRの情報収集や分析、取引に適したツールを提供している証券会社を下の表にまとめました。

ADRを取引できる証券会社
証券会社名 取引手数料
(税込)
為替手数料
(1ドルあたり)
おすすめツール
moomoo証券 0.132%
(最低0米ドル※1
(上限22米ドル)
25銭 moomooアプリ
ウィブル証券 0.2%
(上限22米ドル)
15銭 ウィブルアプリ・
Moneybull
マネックス証券 0.495%
(最低0米ドル※2
(上限22米ドル)
無料 銘柄スカウター
米国株
SBI証券 米国株アプリ
楽天証券 iSPEED
PayPay証券 0.5~0.7%※3 35銭 -

※1 約定代金が8.30米ドル(約1,300円)以下の場合は手数料が無料になります。
※2 約定代金が2.22米ドル(約350円)以下の場合は手数料が無料になります。
※3 日本時間23:30~6:00(夏時間22:30~5:00)は0.5%、それ以外の時間帯は0.7%となります。

このうち、特におすすめなのはmoomoo証券ウィブル証券です。それぞれ詳しく説明しますね。

moomoo証券

moomoo証券は、米国株の取引に強い証券会社です。取引手数料が最も安く設定されており、お得に取引できます。さらに、moomoo証券が提供している「moomooアプリ」には、米国株の分析に必要な財務指標や株価指標などがたくさん掲載されています。誰でもプロ並みの分析ができる点が魅力の証券会社です。

また、moomooアプリはADRの情報も充実しています。具体的には、最新決算のまとめ、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表、各企業の重要経営指標(TSMCであればウエハー出荷量など)をチェック可能です。

<TSMC:最新決算のまとめ>

TSMC:最新決算のまとめ

(出典:moomoo証券のmoomooアプリ)

<TSMC:財務諸表>

TSMC:財務諸表

(出典:moomoo証券のmoomooアプリ)

moomooアプリを使わない場合、ADRとして上場している台湾株やインド株を分析する際には、各企業が公開している決算書を読み解かなければなりません。

ADRとして上場している企業は、英語で書かれた決算書(Form 20-Fなど)が公開されているので、英語が読めて米国の決算書の構造を理解している方であれば、それほど情報収集の難易度は高くないと言えます。

しかし、株初心者の方がいきなり英語の決算書を読むのはとても大変です。moomooアプリでは日本語でADRの情報がまとまっており業績推移はグラフで確認できるので、効率よく情報収集できます。moomoo証券に口座開設して、無料で使えるmoomooアプリを有効活用しましょう。

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口座開設料・年会費などは一切かかりません。

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ウィブル証券は、米国株だけでなくADRも1株未満の0.00001株から取引できます。例えば、TSMC ADRの価格は168.24ドルなので、1株の購入に必要な資金は日本円で約25,328円です。そのため、もっと少額資金で取引したい方は、ウィブル証券で取引しましょう。

さらに、ウィブル証券は『Moneybull(マネーブル)』というサービスが使えます。Moneybullは、証券口座内で余っている米ドルを自動的に外貨建てMMFに投資してくれる仕組みで、年間4%程度のリターンが期待できます。

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<Moneybull(マネーブル)>

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(出典:ウィブル証券

通常、証券口座内の現金には利子が付かないので、米国株投資やADR投資をより効率的におこないたい方は、Moneybullが使えるウィブル証券もおすすめです。

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まとめ

ADR(米国預託証券)について、意味や仕組みなどを紹介してきました。ADRを使うと、外国の会社に“アメリカ株と同じ要領で”投資できるのが魅力です。これを機に、ADRを使った外国企業への投資にチャレンジするのも、おもしろいかもしれませんね。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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