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ADR(米国預託証券)とは?わかりやすく解説します
ADR(米国預託証券)とは、米国市場で取引できる中国やインドなどの外国株式を表します。例えば、米国市場に上場しているバイドゥ(中国本土株)やタタ・モータース(インド株)などの銘柄がこれにあたります。インド株など外国人が投資できないように規制がかかっている国の株式には、通常であれば外国人が投資できません。しかし、ADRとして米国市場に上場することで、外国人も自由に投資できるようになるのです。
このコラムでは、ADRの仕組みや取引するメリット、日本株のADRなどについて、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
ADRとは?
ADR(米国預託証券)とは、米国預託証券の英語表記「American Depositary Receipt」の頭文字の略語で、かんたんに言うと、「米国市場で取引できる外国株式」のことを指します。
実は、中国本土株やインド株、ブラジル株などは、そのままだと現地の国の人以外は株を買えません。外国人の取引に規制がかかっているからです。これらの株を、外国人も自由に取引できるよう、「米国株式市場」に上場させたものがADRです。対象銘柄は、名前の語尾に“ADR”と書かれています(例:“百度(バイドゥ) A ADR”)。米国市場に上場されることにより、本来買えない株を取り引きできるようになるので、気になる銘柄があればぜひチェックしてみてください。
以下に、ADRの一例をご紹介します。
銘柄名 | ティッカーコード | 事業内容 | 国 |
---|---|---|---|
バイドゥ (百度) |
BIDU | 中国の大手検索エンジン | 中国本土株 |
タタ・モータース | TTM | 自動車メーカー | インド株 |
ペトロブラス | PBR | エネルギー会社 | ブラジル株 |
試しに、SBI証券で「バイドゥ(百度)」を検索してみると、中国株式市場では見つかりませんでしたが…

米国株式市場では見つかりました! 銘柄名を見ると、「百度(バイドゥ) A ADR」と書かれており、語尾にADRがついているのがわかります。

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- 【SBI証券】口座開設の方法・取引までの流れ (総合証券口座の開設手順)
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ポイント
ADRは、日本語で「米国預託証券」と言われるように、厳密には「預り証」であり、株式ではありません。しかし、ADR自体は株式をもとにして発行されているので、ADRには株式とほぼ同じ権利があります。当然、配当金も受け取れますし、株主として議決権も使えます。そのため、「ADR=株式」と考えて大丈夫です。
ADRの仕組み
ADRの仕組みを理解するために、“ADRを発行する流れ”を順番に追っていきましょう。下の図をご覧ください。
- C銀行が現地でB社の株式を買い付け、現地の銀行に保管する
- C銀行が現地の銀行に保管したB社の株式に対する「預り証」を、アメリカ国内で発行
- C銀行がB社株式のADRを上場させる
ADRを発行する際は、上の3つの手順を踏みます。こうすると、「外国人に投資規制がかかっている国の銘柄」に対して、間接的に投資できるのです。これが、ADRを発行するメリットとなります。
ただし例外もあり、「外国人への投資規制がない銘柄」も、ADRとして上場しています。例えば、日本の任天堂(7974)やソフトバンクグループ(9984)、イギリスのアーム・ホールディングスやグラクソ・スミスクラインなどです。このような銘柄は、世界でも有名な会社なので、アメリカの投資家から上場を求められていました。そのため、ADRを使って上場しています。
ADRを取引するメリット
ADRを取引するメリットがあるのは、次の3つの条件に当てはまる投資家です。
- インド株など、現地規制がかかっている国の株式に投資したい
- ヨーロッパ株など外国の有名企業に投資したい
- 日本株のオプション取引をしたい
それぞれ説明します。
現地規制がかかっている外国の株式に投資したい
ADRの仕組みで説明したように、現地規制がかかっている中国本土・インド・ブラジルなどの株式に投資できます。中国本土の「アリババグループ」やインドの「タタ・モータース」など、成長性の高い会社が多いのが魅力です。
ヨーロッパ株など外国の有名企業に投資したい
イギリスやドイツなど、ヨーロッパの株式もADRとして上場しています。中国本土やインドのような外国人に対する取引規制はありませんが、アメリカの投資家からの強い要望によって、ADRとして上場しました。
私たち日本人も、アメリカ株を買うのと同じ要領で、外国の有名企業のADRを取引できます。ソフトバンクグループが投資しているイギリスの「アーム・ホールディングス」や、ドイツの鉄道車両メーカー「シーメンス」などを、手軽に取引できるのが魅力ですね。
日本株のオプション取引をしたい
日本株の一部が、ADRとしてアメリカの証券取引所に上場していると紹介しました。実は、アメリカに上場している日本株のADRは、日本の証券取引所に上場している株式よりも、オプション取引に向いています。ADRがオプション取引に向いている理由は、日本とアメリカでは、株式の売買単位が違うからです。
日本 | アメリカ | |
---|---|---|
売買単位 | 100株~ | 1株~ |
日本には、「単元株制度」が設けられているため、基本的に株式は「100株」セットでしか買えません※1。そのため、株を買うためには、数万円~数百万円の資金が必要です。これはオプション取引※2も同じで、必要となる資金(以下、証拠金)が多くなります。
※1 SBI証券やマネックス証券などの一部の証券会社では、100株以下の「単元未満株」を取引できます。
※2 オプション取引については、デリバティブとは?わかりやすく解説しますをご覧ください。
一方、ADRは「1株から取引できる」アメリカの証券取引所に上場しています。つまり、日本とは違い、任天堂やソフトバンクグループなどに「1株から」投資できるのです。オプション取引も同じなので、必要な証拠金が少なくて済みます。
さらに、オプション取引の証拠金が少ないため、参加者がとても多くなっています。その分、取引をスムーズにおこなえる(=流動性が高い)ので、日本でオプション取引するよりも便利です。
以上の理由から、ADRはオプション取引に向いています。なお、ADRとして上場している日本企業は約300銘柄です。2021年1月末現在、日本の上場銘柄は約3,900社なので、そこまで多くはありません。具体的な銘柄は、日本株のADRで紹介しています。ご自分がオプション取引したい銘柄が、ADRとして上場している場合は、活用を考えてみてください。
日本株のADR
インド株と違い、日本株には外国人の取引規制はかけられていません。しかし、アメリカの証券取引所にADRとして上場している日本株が、約300銘柄あります。その一部を、下の表にまとめました。誰もが一度は名前を聞いたことがあるであろう、超有名企業が名を連ねています。
ティッカーコード | 銘柄名 |
---|---|
NTDOY | 任天堂 |
SFTBY | ソフトバンクグループ |
TM | トヨタ自動車 |
TAK | 武田薬品工業 |
SNE | ソニー |
ADRには、日本の証券コードとは別に、アルファベットのティッカーコードが付けられています。任天堂の場合は、日本の証券コードは「7974」ですが、ティッカーコードは「NTDOY」となっています。
有名な会社であれば、ADRを使うと「1株から取引できる」のが魅力です。しかし、1つ注意しなければいけないことがあります。それは、日本の株式市場で付いている株価と、ADRの価格に(わずかですが)差がある点です。
例として、任天堂についてみていきましょう。2022年4月14日の終値について、日本の株式市場で付いている株価と、ADRの価格をまとめました。
日本(株式) | アメリカ(ADR) | |
---|---|---|
価格 | 64,960円 | 64,110円 |
このように、日本とアメリカでは価格に差があります。理論上は、日本で取引されている株券をもとにADRが発行されているので、「日本で付いている株価=ADRの価格」となります。しかし、ADRの需要と供給のバランスによっては、ADRの価格が日本で付いている株価と比べて、大きく上がったり、下がったりする場合があるのです。
そのため、日本企業のADRを取引する際は、必ずしも日本で付いている株価とは一致しない点に、注意しておきましょう。
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まとめ
ADR(米国預託証券)について、意味や仕組みなどを紹介してきました。ADRを使うと、外国の会社に“アメリカ株と同じ要領で”投資できるのが魅力です。これを機に、ADRを使った外国企業への投資にチャレンジするのも、おもしろいかもしれませんね。
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