ソニーグループ(6758)

公開日:2021年5月13日

成長性 2.5
割安性 2.5
収益性 3.0
財務健全性 2.5
理論株価 16,774円(10,400円

※ 2021年5月11日の終値

『プレイステーション』や『ウォークマン』などを作っているソニーグループ(6758)について、企業分析しました(ソニーグループの公式ホームページ)。「分析したいけど、どうやって分析すれば良いかわからない」株初心者の方に向けて、分析の流れはもちろん、各ツールの活用法がわかるように説明していきます。

注意

分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。 銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

基礎情報

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ソニーグループの基礎情報は、上の画像のとおりです。PERに注目すると、2021年5月11日現在は19.5倍となっています。ソニーグループが属する電機業界の平均PERは44倍前後なので、業界平均と比べると割安感があります。この理由は、ソニーグループがさまざまな事業を持っていて、投資家が適正株価を決めるのがむずかしいからでしょう。

株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

「SONY」と聞くと、プレイステーションやウォークマンを思い浮かべる方が多いと思います。ソニーグループでは、プレイステーションを作っている「ゲーム&ネットワークサービス(以下、ゲーム)」事業や、ウォークマンを作っている「ホームエンタテイメント&サウンド(以下、ホームエンタテイメント)」事業の以外にも、多くの事業を展開中です。

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ソニーグループは複数の事業を展開しているので、セグメント構成を見て“どの事業が主力か”を把握しましょう。上の円グラフを見ると、「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(以下、エレキ)」と「ゲーム」がメインの事業だとわかります。その次に売上高の構成割合が高いのが「金融」です。ソニーグループを分析する際は、最低限この3つの事業に注目しておけば良いでしょう。

企業情報

(出典:SBI証券の会社四季報)

企業の概要を把握したら、会社四季報を使って最新の情報を調べます。更新は四半期ごとですが、足元の業績トレンドなどを把握できるのでおすすめです。ソニーグループは、アニメ配信事業や音楽制作事業を買収しており、エンタメを強化しているとわかりました。

業績のトレンド

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ソニーグループの売上高(青色の棒グラフ)と、営業利益(赤色の折れ線グラフ)を確認します。売上高と営業利益はともに2017年ごろまでは横ばいとなっていましたが、2018年以降になって売上高と営業利益が増加傾向になりました。業績が回復したのは、ソニーグループが経営改革をおこなったためです。経営改革の内容をかんたんにまとめると、下のようになります。

  1. 各事業で「量」より「質」を追求
  2. 固定資産の減損や販売会社の人員削減など、構造改革を実施
  3. エレキ中心から、エンタメ中心の売上構成に改革

さらに、プレイステーションプラス(以下、PS+)といったサブスクリプション型のサービスを強化している点も、業績アップに影響しました。

財務諸表を分析

貸借対照表

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、貸借対照表を図解したものです。「投資その他の資産」と「固定負債」の多さが目立ちますね。これは、金融事業に関する項目です。生命保険や銀行事業を展開しているので、顧客から預かったお金が固定負債に計上されます。そして、預かったお金を株式や債券で運用しているので、投資その他の資産(投資有価証券)が多くなっているのです。

プレイステーションやカメラなどを作る“製造業”の印象が強いですが、貸借対照表の形は“金融業”に近いという、おもしろい会社ですね。

損益計算書

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

売上高の推移は冒頭で確認したので、利益率を見ていきます。営業利益率(赤色の折れ線グラフ)とROA(青色の折れ線グラフ)を見ると、2017年ごろから収益性が高まっています。この理由を探るため、事業別利益を見ましょう。

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ゲーム事業に注目すると、2017年以降に営業利益率が高くなっています。理由は、ゲームソフトの販売PS+の有料会員獲得が好調で大幅増益となったからです。このほかにも、音楽事業の増益などにより、ソニーグループの営業利益率が上昇しました。

また、最新の2021年3月期決算では、営業利益が前年比で増加しました。理由は、コロナ禍でゲーム事業が好調だったためです。今後もしばらくは自宅で過ごす時間が増えると考えられるので、ゲーム事業の売上構成が高いソニーグループにとっては追い風となるでしょう。収益性がさらに上がっていくかもしれませんね。

キャッシュフロー計算書

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ソニーグループのキャッシュフロー計算書は、投資キャッシュフロー(以下、投資CF)のマイナスが続いており、営業CFよりもマイナス額が大きくなっているのが特徴です。この動きだけを見ると、「かなり投資に積極的な会社」に見えますよね。しかし、投資CFの中身は「金融ビジネスにおける投資及び貸付」です。

「金融ビジネスにおける投資及び貸付」とは、ソニー生命の保険加入者から集めたお金を、国債や株式などに投資しているために発生した支出です。この投資は、本業の成長に直接影響するわけではありません。そのため、キャッシュフローの形をざっくり把握した後は、投資CFの中身も確認して、成長につながる投資ができているかを見極める必要があります。

また、投資に積極的なのかを知りたい場合は、キャッシュフロー以外に「売上高設備投資比率」の確認がおすすめです。

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

売上高設備投資比率は、2012年の4.5%から2020年には6.2%まで上昇していました。成長のために投資を欠かさずおこなっている様子がわかりますね。

もっと詳しく設備投資の状況を知りたい方は、有価証券報告書を開いて「設備の新設」と検索してみましょう。下のような項目が出てきて、何に投資しているかがわかります。

上は2020年3月期のソニーグループの投資計画です。ここには来期以降の投資計画が書かれているので、最新の有価証券報告書から来期の投資計画がわかります。過去の有価証券報告書にさかのぼって、どのような投資がおこなわれてきたかを見るのもおすすめです。

証券会社のツールは万能ですばらしいものが多いですが、詳しい情報が得られないのがデメリットです。より深い分析ができるようになりたい方は、ぜひ有価証券報告書もセットで分析してみましょう。

長期投資の3つのチェックポイント

ソニーグループの概要について理解したところで、長期投資の3つのチェックポイントに注目して、ソニーグループについて深堀りしていきましょう。長期投資の3つのチェックポイントは、以下のとおりです。

  1. 長期潮流に乗っているか?
  2. 競争優位性を持っているか?
  3. 付加価値が高い産業か?

以上3つのポイントを満たす会社は、長期的に成長しつづけるポテンシャルを持っている可能性が高いです。PERや営業利益率だけで投資先を見極めるのではなく、この3点を満たしているかもセットで確認しましょう。それでは、各項目を見ていきます。

長期潮流に乗っているか?

<エレクトロニクス業界の生産額推移>

エレクトロニクス業界の生産額推移

(出典:JEITA『電子情報産業の世界生産見通し2020』[PDF])

上のグラフは、エレクトロニクス業界の生産額推移です。青色の棒グラフが世界生産額を、オレンジ色の棒グラフが日系企業の生産額を表しています。日系企業の生産額はここ数年横ばいですが、世界の生産額は増え続けています

また、今後は「5G」や「自動運転」などがテーマになるでしょう。そのため、エレクトロニクス業界は、さらに成長が続くと予想されています。

続いて、上のグラフはゲーム業界の市場規模推移です。ソニーグループが属するのは、緑色の「コンソール」です。ゲーム市場全体の伸びには負けるものの、コンソール市場も少しずつ大きくなっています

以上からわかるように、ソニーグループに関係のある市場は、今後も成長が予想されています。市場の成長が追い風となり、今後も業績を伸ばせる余地は大きいと考えられます。

競争優位性を持っているか?

ソニーグループの競争優位性は、次の2つによって生み出されていると考えられます。

  1. 先取りの精神
  2. 質の高さを追求

その結果、CMOSイメージセンサーで圧倒的な地位を確立したり、世界中の人が熱狂するプレイステーションを世の中に送り出したりできたのです。

ここで、企業理念を読んでみましょう。「好奇心を刺激する、未来、発想、遊び、技術で人々を鼓舞すること。」と書かれています。これが、「先取りの精神」や「質の高さを追求」などに影響を及ぼしたと考えられます。

こちらは、ソニーグループの統合報告書に書かれた、事業の移り変わりの様子です。エレキ事業からはじまったソニーグループは、イメージング事業や音楽事業、金融事業、映画事業、ゲーム事業と手を広げてきました。このように、ひとつのジャンルにとらわれずに、さまざまな事業で「先取り」に挑戦してきたのが、ソニーグループの競争優位性と言えるでしょう。

付加価値が高い産業か?

まずは、ゲーム事業の付加価値について考えていきます。ソニーグループの強みは、ジャンルにとらわれずに複数の事業を持っている点です。そのため、ゲームと映画を組み合わせたり、映画と音楽を組み合わせたりと、自社が持つコンテンツを掛け合わせて新しい楽しみ方を生み出しています

このようなコラボレーションは、ソニーグループだからこそ実現できたものです。他の企業はまねできない点が強いですよね。

加えて、ネットワーク売上の成長も、ソニーグループの付加価値の源泉となっています。ネットワーク売上とは、PS+のサブスク会員の売上などを指します。PS+の会員は世界3,500万人を超え、「顧客が何に興味を持っているのか」など大量のデータが集まってきます。このデータを使って顧客のニーズにぴったり合ったサービスを提供できるのが、ソニーグループの付加価値の源泉になっているのはまちがいないでしょう。

主力事業ではないものの、イメージング事業も高い付加価値を生み出しているので紹介します。イメージング事業では、自動運転車などに使われるイメージセンサーを作っています。ソニーグループは、カメラを作っていることもあり、高画質を実現する画素設計技術と回路設計技術を持っています。そのため、世界から製品力を高く評価されており、イメージセンサーの世界売上シェアは5割を超えNo.1です。

理論株価

企業情報

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

ここまで分析が終わったら、いよいよ投資判断になります。株価が割安なら投資先として魅力的なので、割安性を調べていきます。割安性はPERを使えば大まかに判断できますが、分析のプロに一歩でも近づきたい方は、理論株価を組み合わせて考えるのがおすすめです。

理論株価をひとことで説明すると「会社の価値」です。もし株価が会社の価値(1株あたり)よりも安ければ、その会社の価値が正しく見直されて、株価が上がるかもしれません。このように、理論株価よりも安い株価が付いている銘柄を見つけるのが、中長期投資の大事なポイントとなります。

本来であれば、理論株価は複雑な計算が必要なのですが、GMOクリック証券財務分析ツールを使えば、ツールが自動で計算してくれるので便利です。ソニーグループの理論株価は「16,774円」、2021年5月11日時点に市場で付いている株価は「10,400円」となっています。2021年5月11日時点では、ソニーグループの株価は割安です。

理論株価は会社の価値を表す指標なので、PERとは少し違った目線で会社の割安性を評価できます。ただし、理論株価は万能ではありません。詳しい説明は省きますが、計算方法や計算する人の考え方次第で数値が変わってしまいます。参考程度にとどめておきましょう。

ソニーグループを分析するときに参考にした、無料のサービス

今回、企業分析で使ったツールは下の3つです。この3つのツールを使えば、株初心者の方でもプロ並みの分析ができます。投資判断には欠かせないツールで、各証券会社に口座開設していれば、誰でも無料で使えます。まだ口座を持っていない方は、この機会に作っておくのがおすすめです。

ツール 証券会社 ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

『マネックス証券×やさしい株のはじめ方』限定の口座開設タイアップ企画!
こちらのページからマネックス証券に新規口座開設すると、やさしい株のはじめ方オリジナルレポート『銘柄スカウター完全攻略マニュアル』がもらえます!銘柄スカウターの使い方企業分析事例を徹底解説しているので、この機会にぜひゲットしてください♪

まとめ

ソニーグループは、社長の交代によって、テレビやパソコン中心の会社から、ゲームや音楽・映画などの総合エンタメの会社に変わっています。エンタメコンテンツの販売方法も、これまでの店頭販売からサブスクリプション型の配信へと変わっています。今後も会員数を増やし、営業利益率が高まっていくでしょう。

また、自動運転や5G向けの半導体を作っているので、この分野が売上高アップに貢献するかもしれません。売上高は8.6兆円と巨大な会社ですが、まだまだ収益性アップが見込めるおもしろい会社ではないでしょうか。

「企業分析はむずかしい」と考えている方が多いですが、ここで紹介した証券会社のツールを使えば、分析に必要な基本的な情報がすべて手に入ります。あとは、類似企業と比べたり、ひとつの会社を時系列で比べてみて、投資先としておもしろそうかを判断すればOKです。株式投資の一歩として、まずは証券会社のツールを使って、気になる会社を見てみましょう。

注意

ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。また、このページの分析は、記事公開時の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

ページ上部へ移動